国指定重要文化財・一条恵観山荘(いちじょうえかんさんそう)
JR鎌倉駅から京急バスで10分の「浄明寺」バス停で下車して徒歩2分です。車の多い金沢街道に面する入り口ですが開いた竹の門扉が別世界に誘います。
まず出迎えてくれたのが陽射しに煌めく紅葉です。赤色の野点傘と紅葉のグラデーションの取り合わせが素晴らしいですね。今年見た一番の美しさです。
次に迎えてくれたのが菊の花手水(はなちょうず)でした。庭園内の各所に置いてあり色鮮やかで目をたのしませてくれます。
受付横の入り口より望む中庭の紅葉です。白の砂利敷きと笹の緑が紅葉を引き立てています。
中庭を見ながら回廊を進むと陽射しが変わり息を飲むような景観となります。日曜日でしたが静寂の支配する素晴らしい空間です。
季節を感じる紅葉の手水鉢(ちょうずばち)です。三色の紅葉に囲まれて蟹の親子がいます。沢蟹でしょうか?
手水鉢(ちょうずばち)とは茶室の露地や庭などに設けられる手洗い用の水が入った鉢です。元々は神前や仏前で身を清めるための水を入れた器だったとされています。花手水(はなちょうず)とは手水鉢を色鮮やかな花々で飾ったものです。
御幸門に向かう足元は今は採れない希少な真黒石によって作られています。この様な敷石の通路を延段(のべだん)と呼びます。
山荘の入り口に立つ茅葺屋根の御幸門。京都に山荘が置かれていた時に霊元天皇を迎えるために建てられたそうです。
御幸門を入った所にあった菊の花を浮かべた綺麗な花手水です。う~ん癒しの空間ですね。
この建物が「自然を愛した都人の風雅な茶屋」一条恵観山荘で田舎家風の造りです。山荘内の見学は月に数回開催される建物見学会に事前予約が必要です。
少し戻って順路に従います。「かふぇ楊梅亭」これがすぐ読めれば大したものです。正解は後ほど。
山荘の前庭はそれほど広くありませんが随所に石が使用されています。江戸時代前期の元大名茶人・金森宗和好みの枯山水に造園されたとのことです。
庭園内を流れる小川の中にあった花手水。左隅に沢蟹のオブジェ。水は滑川から引き込んだのでしょうか綺麗な流れでした。
紅葉に囲まれた四阿にはシクラメンが置いてありました。休憩をとる方々のホットする空間を作っています。
山荘横で深紅に色付いた紅葉のアップです。
「京の雅な寛永文化」を武家文化の所産が今も色濃く残る古都・鎌倉で追体験する。自然を愛し、その姿に美と癒しを求めた一条恵観の趣が窺える庭園空間。【一条恵観山荘パンフレットより】
紅葉の小径の入り口と途中の花手水、さらにさりげなく置いてあるモミジの葉。細やかな造形に感嘆します。
紅葉の小径の右手に滑川が流れています。滑川は近くの朝比奈峠付近を源流とし、鎌倉の中心を流れて由井ヶ浜に注いでいます。海を介して鎌倉と京都を結んでいるのでしょうか。
紅葉の小径を下りたところは今が見頃の色付きでした。赤い野点傘に負けていません。
奥の庭園に置いてある粋な演出です。周囲にベンチと花が配置され静かで心なごむ空間です。
階段を登りカフェ楊梅亭(やまももてい)に向かいます。この字は難しくて読めませんでした。案内板のローマ字を見てやっと分かりました。
カフェ楊梅亭は大きなガラス窓の数寄屋造りで自然の中に溶け込む様に建てられています。
室内からの眺めも素晴らしく抹茶やコーヒーを楽しめる至福の空間です。外を眺めながら静かで贅沢な時間を過ごしました。
窓から見えた花手水。あっ!沢蟹です。思わずシャッターを切りましたが逃げる事はないですね。
スタッフの方に「初めて来ました」と伝えると、他にお客様がおられないので眺めの良い席に案内されました。窓の外の紅葉を眺めながらゆっくり抹茶と生菓子をいただきました。ありがとうございます。
カフェの隣にある茶席「時雨」の丸窓です。障子の丸窓も京都を感じさせていいですね。
庭園散策の最後に編笠門の奥にある恵観公と神様を祀ってある社(やしろ)に参拝しました。階段の隅に目立たぬように置かれていた花手水です。
中庭に戻るといっそうの陽射しを浴びた紅葉が輝いていました。
今日は古都鎌倉で出会えた心なごむ素晴らしい庭園を散策できました。次は紫陽花の季節に来てみたいですね。
帰宅後にパンフレットを読み庭園の奥深さを知り、庭園図を眺めていると再訪の気持ちが沸き上がりました。満席で「楊梅亭」に入れなかった事もあり2週続けての訪問です。
一条恵観山荘は江戸初期の公卿・後陽成天皇の第九皇子である一条恵観によって1646年頃に京都西賀茂に茶屋として建立されたものです。京都の「桂離宮」に並び当時の朝廷文化を今に伝える貴重な建築物です。1959年(昭和34年)に京都から石や枯山水と共に鎌倉の地に移築され、2017年6月から一般公開されています【一条恵観山荘パンフレットより・追記あり】